【Exhibition】川本杜彦 “青を青とも知らぬあの時”

【Exhibition】川本杜彦 “青を青とも知らぬあの時”

SEZON ART GALLERY B1F 367°


Information

入学式の数日後、あのカフェで君は僕の手をその小さな両手でさすりながら、「私に手があって良かったって初めてそう思うの。」と涙を流した。
その瞬間僕は気づいた。というよりも僕の全ての感覚が体の中で叫んでいた。「この人だよ!出会ったんだよ!」と。その時僕はまだ何も君のことを知らなかったのに、説明も答え合わせも要らなかった。一瞬で君と並んで見つめる未来へと道が伸びていた。そして、聞かなくとも君も同じ思いだと分かっていた。

今回の展示は、そんな彼女との初体験についてだ。
なんて幸せなことだろうと思う。人生で一度きりしかないその時を君と迎えられたことを。また、そのことを祝福してくれる人が僕らの周りにいることを。

君と初めて体を重ね時、なぜだか死を近くに感じた。死を一度も知らないはずなのになぜそう思えたのかは分からない。
そしてそれは海の深さにも似ていた。底が深くなるにつれて光の届かない未知の世界の中に身を沈め、無我夢中に踠いても息はできない。哺乳類は海では生きられないことを知る。けれども、ふと気づくと僕は君という海の中で泳いでいた。
女性とは、女性の体とは、男である僕にとっては分からなさに満ちているものだ。頭では理解しても、感覚では共感出来ない。そのことは恐ろしくもある。けれども、どこまで深く潜っても分からないことがある、ということを分かるために潜り続けたい、そう思う。

「僕が出会ってきた人へ。君が出会ってきた人へ。そして僕らがこれから出会う人へ。」

君の首筋を伝う汗に、顎に滴る汗に
僕は舌を伸ばす
乾いた世界の動物が土に含まれる塩分を求めるように
乾いた肌に沁みるは太古の記憶
潤んだ目の向こうの君の横顔
深く沈みながら振り返り見れば水面に浮かぶは太陽

母なる海に帰りたまえ この肢体
溶けてゆけ青を青とも知らぬあの時の揺らぎの中に

空に飛び上がれば
目の前に裂け目が現れる
時空が裂け
溢れ落ちる無数の屍
彼らを抱きとめた膜はもう絶えた
孤独な密
握手とさようなら
突き上げたこの拳を優しい風で包んでくれ
指先から生えた鋭い爪が掌を貫く
腕を伝った血は
数十秒の落下で海に溶ける

クジラの生きる
母なる海に帰りたまえ

そして潜りたまえ
そこには
底には
まだ見ぬ大地が
山脈が
川が流れていることだろう

川本杜彦

この度SEZON ART GALLERY地下1階では、川本杜彦による個展“青を青とも知らぬあの時”を開催致します。

川本は今年3月に麻布学園を卒業し、4月から東京藝術大学美術学部先端芸術表現科に入学しました。
本展では1人の人間との出会いと体験、そこに至るまでの始まりの日々をテーマにしたインスタレーションを発表致します。

会期

2017.9.1(Fri)-.12(Tue)

オープニングパーティー

2017.9.1(Fri) 18:00-20:00



川本杜彦(かわもともりひこ)

1998年 東京生まれ 麻布学園出身
2017年 東京藝術大学先端芸術表現科入学


MORE EVENT


SEZON ART GALLERYは、セゾン現代美術館の新たな活動の一環として東京の神宮前に設立したアートスペースです。 「芸術の日常性」をテーマに、作品が生まれるアーティストのアトリエ、生まれたものが外界と摩擦を起こす展示・ 販売を行うギャラリー、さらに想像力を膨らます人々の対話の場となるカフェ・ダイニングバーが一体化した空間です。


PAGE TOP