畑山太志”時はぐれ”

現在開催中

畑山太志”時はぐれ”

SEZON ART GALLERY 1F


Information

この度、SEZON ART GALLERYでは9月2日から26日まで、畑山太志の個展「時はぐれ」を開催いたします。

暗がりの中で涙を浮かべるまばゆい光は私を知らない場所へと連れ出してくれる。なにも考えなくてもいい時間の中で、過去の記憶とこれからの記憶が緩やかに織り重なる。いつのまにか私と今はほどけていて、忘れていた過去が目の前に立ち現れて触れることができる。そしてそれはこれから先にも感触を絶やさずにとどまり続ける。たとえ私が今に戻っても、光源は失われない。
岩間の光源と木々の深い暗がりの間から各々の時間が場所をつくる。私は暗がりの中で光源を頼りに居場所を探す。今とはぐれて迷い込む森の中、私は眼の底で別の時間と共にいる。

畑山太志

畑山太志は多摩美術大学在学中の2014年、何気ない風景の中にある不可視の存在への興味から、独自に空気や存在感を捉え、白色を基調として緻密に描き込まれた作品が「第1回 CAF ART AWARD」優秀賞・名和晃平賞を受賞、その細かい筆跡一つ一つに生命を宿すかのような表現が注目されてから、セゾン現代美術館「美藝礼讃ー現代美術も古美術も」(2017年)に参加するなど現在活躍が期待されている若手アーティストの一人です。

本展の作品は、これまでの静謐さの中に満ちる動的な表現に加え、画面上で大胆に飛び交う光を想起させる大小の筆跡と、奥行きの知れない暗闇に引き込まれるような、深淵を感じさせる新たな展開を見せています。
そこには作家自身が眼底検査を受ける度に体験してきた感覚が反映されているのかもしれません。畑山はその経験を以下のように語っています。
「瞳孔を開いて光源を見つめ続けなければいけない状況下で、目を背けたくなるような、あまりにも眩しい光の向こう側から視線を感じて、今という時間感覚がなくなっていく」

畑山にとって光とは、現実にある物に対してその存在を明らかにするだけでなく、肉眼では捉えられない存在を描き出すための手掛かりであり、数多の視線の象徴ともいえるのではないでしょうか。

可視の存在と不可視の存在や事象を画面上であえて同列として、幾つもの色彩と筆跡を重ね表現することで、そこには生命感と求心力が生まれています。
鑑賞者は画面と対峙した際に、深淵から向けられる視線と自身の視線との交差によって、多次元的な空間が立ち現れてくるのを感じ取れるでしょう。

畑山が見いだすそれぞれの光・時間が共存する世界を、是非ご高覧ください。

オープニングパーティー

2017.9.1 (金) 18:00-20:00

在廊日

2017.9.3 (日) 16:00-18:00
2017.9.5 (火) 16:00-18:00
2017.9.9 (土) 14:00-18:00
2017.9.16 (土) 16:00-18:00
2017.9.23 (土) 16:00-18:00
2017.9.24 (日) 16:00-18:00


批評

あの光の残響を聞いた? 

木下桂佑
1990年、愛知県生まれ。
多摩美術大学博士課程前期美術研究科芸術学専攻終了。

論文
『ティノ・セーガル作品における記録の拒否について』(2015年、学士論文)
『キュレーションはどこへ向かうのか ー記憶と接触ー』(2016年、研究誌「subject’15」)
『空の領土化 ー菅木志雄作品の存在論』(2017年、修士論文)

受賞歴
芸術学科優秀卒業論文奨励賞


「森の中にある苔むした倒木」、一言で表現すれば、それが私が初めてネット上で出会った彼の作品である。28年前に訪れたフィンランドのクフモという街を彷彿とさせたからか、とにかく作品の実物を見たい衝動から彼に会った。彼は、一見、静謐とした作品を彷彿とさせる静かな面持ちだが、同時に、鋭い爪を隠し持っているに違いないと直感した。その爪をいつ作品に出現させるのかと思っていた矢先に、新作《百鬼の日差しは夜を行く》を見た。衝撃だった。彼が追い求めている永久不変の「光」=森羅万象の魂、と、可変的に遷移する物質=森、が見事に共生しているのだ。そして私は彼の策略通り、彼の作品の中に包まれ、今とはぐれ、過去と未来の記憶を探し求めていた。現世では霊長類ヒトという物質を纏い、畑山太志という画家の職業(さだめ)を背負った彼の「光」は、ますます多くのヒトの「光」を作品の中に誘(いざな)い、包み込んでゆくに違いない。

セゾン現代美術館代表理事
堤たか雄

畑山太志の作品を最初に見たのは2014年のCAF賞のコンペの審査会だった。
 それはキャンバスに描かれた、全体的にモヤモヤとした白っぽい印象の絵画だった。離れたところからは、何が描かれているのかわかりづらい。近づいてよく見ると、表面に絵の具の繊細な凹凸があり、筆の跡が感じられた。形や記号を組み合わせて世界を物語るようなやり方ではなく、画面はスクリーンのように視界を覆い、視線は”光子”の振る舞いをテクスチャに置き換えたようなマチエールに捉えられる。つまり、テクスチャを入り口とした物質的な没入感を局所から全体の表皮へと、丁寧に引き伸ばすことによって、リアリティを紡いでいくやり方だ。彫刻を鑑賞する時に、”目で触る”と表現することがあるが、まさに視触覚的な感覚が畑山の絵画にはあった。彼の作品の本質的な面白さはそこにあるんじゃないか、と感じた。
 印象派から続く、視覚の分析的なアプローチに終始するのではなく、ピクセル化された画像をフラットに取り扱うのでもなく、あくまで現代に生きる彼自身の内的な体験が純度の高い”光景”として、浮かび上がることが重要だと思う。今後の彼の展開に期待したい。

アーティスト、SANDWICH ディレクター、京都造形芸術大学教授 
名和晃平



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SEZON ART GALLERYは、セゾン現代美術館の新たな活動の一環として東京の神宮前に設立したアートスペースです。 「芸術の日常性」をテーマに、作品が生まれるアーティストのアトリエ、生まれたものが外界と摩擦を起こす展示・ 販売を行うギャラリー、さらに想像力を膨らます人々の対話の場となるカフェ・ダイニングバーが一体化した空間です。


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